労働問題に詳しい?
2023/10/31
1年も前の話になりますが、ラジオのニュース番組の労働問題特集での一幕。
Q「労働基準法では有給休暇の使用順序の規定がないため、私が勤めている会社では有給休暇を使用する際、民法第488条などの規定により新しいものから消化されてしまいます。どう思いますか?」
A「そんなの初めて聞きました。おかしいです。労働基準監督署に行って是正してもらいましょう」
(パーソナリティとの関連トークの後)
Q「先程の有給休暇の使用順について質問したものです。質問の意図を理解して頂けたのか疑問です」
A「大丈夫ですよ。理解しています」
この回答者は「労働問題に詳しい弁護士」との触れ込みのゲストですが、「労働問題に詳しい」ということであれば、このことが初耳というのはあまりにも勉強不足ですし、労働基準監督署に行っても何も問題がないが介入できない案件であることは知っていなければおかしな話です。
この放送回以来、夕方に聴く番組を荻上チキから辛坊治郎に変えました。
質問の通り労働基準法では有給休暇の使用順序に関する定めはありません。一方で民法第488条は「どの有給休暇を使うかは使用者が指定できる」第489条は「使用者に有利な方(新しいもの)を消化する」と解釈できるので、就業規則に定めれば質問のような運用は可能となります。
労働基準監督署に与えられている権限は一般の人が思っているよりかなり狭く、労働基準法(他最低賃金法など一部の法令)違反でなければ、是正や改善の指導は出来ません。
質問の件は労働基準法違反ではないので労働基準監督署では何も出来ません(せいぜい争う場合の正しい窓口を教えて貰える程度です)。
労働基準監督署で何も出来ないから問題ないという意味ではなく、例えば今までは古い方から消化してきたが、あるタイミングで新しい方からに変更したなどという場合には、争えば不利益変更で無効と認められる可能性はあります。
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